
2055年、アンドロイドと人間が共生する世界で、自分そっくりのアンドロイドを用意し、恋人と別れる準備をするお話。
そう遠くない近未来に起こりうるかもしれないアンドロイドとの共生。そんなSFファンタジーの世界が短編で描かれていますが、完成度
がとても高い作品です。
ニセモノだと分かっていても、恋人そっくりのアンドロイドを作らずにはいられなかった弥凪。しかしきっと徐々にその矛盾に苦しむことになったのでしょう。葵ではなく、アオイだという事実を毎朝突き付けられ、胸が痛み涙する日々に耐えられなくなり、今度はヤナギを用意します。一人の寂しさが二人でいる苦しさを生む、そのツラさと切なさで胸がいっぱいになりました。そして、代えがたい命の重さに涙しました。
アンドロイドの有用性や存在価値を認めつつも、人間のような感情を生まない欠落性を上手く表現したこの短編は、SFであると共に愛の物語である深い作品です。三月先生のストーリーテラーぶりを堪能して欲しいと思います。
と、作品の購入者はこのようなレビューをしています。
アオイと弥凪(やなぎ)は仲睦まじい恋人同士。
ある日、弥凪そっくりのアンドロイド’ヤナギ’が届く。
アンドロイドなんて悪趣味だというアオイだが、弥凪は病気療養で遠くへ行く自分の代わりに、アンドロイドを置いていきたいと言うのだ。
「抱き心地を確かめてみる?」というが、アオイは乗り気ではない。
目覚めた’ヤナギ’はアオイに口付けるが――。
2055年、アンドロイドと人類が共生する世界。切なく愛おしい終わりと始まりの物語。