
作者さまの作品を追って読んでいます。何となくこの作品は、試し読みから続きが気になってしまって購入しました。表題作「百草の裏庭」+4つの短編集。
表題作を読んでいたらそんな感じじゃないのに、何だか泣けてきてしまう不思議なお話でした… 異
形な男 ギーゼルと調合師の少年 マルセルの物語…。1番切なさを感じたのが、冒頭から10ページ辺りでした。10年間…お互いの存在を感じながら、2人は何を思っていたんだろう…と。一方は生で、もう一方は死だったからか、余計に胸に響いたのかもしれません。泣けてしまったのは、この2人の優しい関係性なんだと思います。季節の移り変わりに身を委ねながら、時を紡ぐ様な2人の描写に何だか感動してしまって… 時間て無いと思えば無いものだし、有ると思ったら有るものなのに、私は何をあくせくしているんだろ…と、少しはこんな風に過ごせたらな…と最後は思ってしまいました。
他短編…。フォローしている方の「爪先〜」のレビューを拝見していたら、お話とタイトルの解説に(灯火です。)あ、なる程…と、だからか…とじんわりして、私もこの作品では、タイトルも注意しながら読んで見ました。1番不思議な感覚になったのが短編「stalks」です。この少年はいつから主人公に恋をしたんだろう…と。外から来たのか温室なのか……最後は、恋という種を主人公に植え付けた…?とか…。タイトルの解釈で、どの様にでもなって…不思議だー…となった物語でした。 他短編「旅の途中」…こんなに優しい想いの告げ方を見たのは初めてで…私も主人公と一緒になって、ウルウルしてしまいました。最後は表題作の番外編で…冬支度…。この収め方もまた良いなぁ…と。この一冊もそうですが、やっぱりというか…読み終わったら満足のため息で、作者さまの作った世界にしばらく浸ってしまいました…。良かったです。
そこにはキュンや萌えやエロとかエチとかいうものは無いんですが、とにかく作家さんの世界観が美し過ぎて感動なんです!
お話はタイトルの作品のほか4作品の短編が入っていますが、そのどれもが穏やかな時が流れていて、ラブに関してはどれもふんわりな
感じなので、好き嫌いは分かれるのかも知れませんが、表紙で「嗚呼、美しいな」って思えたら好きな世界かもしれません(^^
幼い兄妹:マルセル・ベルタと、異形の者との出会いから始まります。森で毒虫に噛まれた?妹を、その異形の者は助けてくれました。マルセルはその代わりに、妹が嫁いだら自分の身を差し出す約束をしますが・・・・・・・妹想いの優しい薬師:マルセルと、実は優しいジェントルマンな異形の者:ギーゼルベルトとの、心の交流を描いています。ラブ的なものはほんのり・・かな。でも精神的には繋がっているのでやっぱりBなLになるのかな・・・。
まずですね・・・作家さんの生き物愛がそこかしこに溢れているんですよね(^^どの作品にも、植物や鳥、昆虫や魚等々・・どれも緻密に、愛情を持って描かれているように思います。ウィリアム・モリスのテキスタイルを思い出しました(^^尤も、それだけじゃなくて、何もかも全てが丁寧に描かれていて、それはもう一コマ一コマが芸術なんです!!そこに添えられる文章もとても穏やかで美しくて・・・別世界へトリップしたような、夢心地な読後感でした♪現代ものの作品も入っていますが、個人的には衣装や建物や暮らし方など「百草の裏庭」の世界観のほうが断然好みもうホントに画力が素晴らしくて・・・これは紙媒体でも欲しくなりますね
夢のように美しい一冊です。
表題作5話+描き下ろしと4つの短編が入っています。
とにかく圧倒的に紙面が美しい!
ベタと点描に映える細やかな描き込み。
とりわけ草花の使い方が、少女漫画の耽美絶頂期をはるかに凌駕しているのではないか
と思うほどです。
扉、目次、幕間、さらにはページ数の隣にまで細かで忠実でその草木の1番美しい顔を捉えています。
ホントに惚れ惚れと眺めまくってしまい、読み切ってみればなんと2時間半もかかっていました。
………
紙面の美しさもさることながら、ストーリーにも優しく美しい魂が溢れています。
青井先生の、個々人の思いや立つ瀬をきちんと尊重する姿勢が大好きです。
その上で彼らが優しく寄り添い、相手への敬いを忘れない関係性が絵と同様に美しくて、温かい感情が込み上がり涙ぐんでしまいます。
どのお話も好きですが、「stalks」と「浸食」が、まるで対のように呼応し響かせ合ってているようで、とても印象的でした。
お互いの間に脇として介在する植物が、実は主役だったという。
この世界でならコントロールされてもいいかな、なんて思っている時点で、既に植物に主導権を握られていますよね。。。
………
しおりのように挟まっている標本ラベルがめちゃ気に入ってしまい、学名からその植物を調べてみました。
順に、大薊(マリア薊)・カモミール・ツルヘビ苺・西洋弟切草・リコリス(カンゾウ)・匂いすみれでした。
作者さんの「爪先に光路図」がとても好きで、他の作品も読んでみたくて、フォローさんのレビューからこちらを選びました。(「爪先〜」の魚のお話、フォローさんが書かれていた”想いを寄せる”の可視化が”寄り添って泳ぐ魚”というのがとてもしっくりきまし
た。)
この「百草の裏庭」もとても良かったです。じんわりと染みてきて、心地よいです。ほんの少し漂うようなほの暗さも、むしろ落ち着きます。
表題作と他短編4話、どれも違った趣を味わえます。
表題作は、友情(友愛)から恋が芽生えるのでしょうか…。と考えるのも申し訳なく思えるような、2人の穏やかで静かで満ち足りた時間に私も満たされます。2話と3話の間に挟まれた番外編で、続きを知ることはないと思っていた物語を、一緒に読める人がいることの喜びが浸透してきて、胸が詰まりました。
フォローさんが気に留めた「stalks」の意味を調べてみると、大まかに二通りの意味があったのですが、その両方を落とし込んでいると思えるストーリーに感動してしまいました。恋を種付けされた庭師は、より一層優しく愛しさを込めてカンナを(草花を)大事にし、次の花を咲かせるお手伝いをするのだろうなと私は思いました。そして、それに応えるように美しい花を咲かせるのだろうなと。
他のお話もどれも好きでした。「旅の途中」の作中の王子と羊飼いのお話も別枠にできそうな物語で…それ含めて、何度も反芻したい短編集です。
と、作品の購入者はこのようなレビューをしています。
子供の頃、薬草摘みの最中に倒れた妹を助けてくれたのは、異形の男だった。十年後、マルセルは嫁ぐ妹を見送ると「一緒に来い」と言われた約束を果たすため、彼のもとへ向かう。死の覚悟をしていたが──「友になって欲しかったのだ」存外に優しい目をしている彼、ギーゼルベルトの孤独を知り……。